ChunPom’s diary

数学、物理、機械学習に関する話題。あと院試、資格、大学入試まで。

2018-01-01から1年間の記事一覧

実家に帰ったらスミルノフ教程が置いてあった

毎年年末年始には実家に帰るのだが、なぜかスミルノフ高等数学教程が置いてあった。 スミルノフ高等数学教程は全12巻からなる理工系学部〜修士向けの数学の教科書。特に、物理への応用を念頭においたものになっている(気がする)。確率論や多様体は含まれてい…

統計検定一級合格への道筋

2018年下期の統計検定一級、統計数理と統計応用(理工学)の両方とも無事合格しました!特に統計応用はS評価でした。問題の傾向はいつも通りという感じ。いずれにせよ、一級の対策を自分なりにまとめようと思います。 ① 問題分析 統計数理 ・昔から一貫して確…

参考書紹介(統計学向け)-機械学習、ファイナンスもあるよ

統計学に特化した参考書紹介です。 統計学の基礎的教科書 ・統計学入門 (基礎統計学Ⅰ) もっともbasic。 統計学入門 (基礎統計学?) 作者: 東京大学教養学部統計学教室 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 1991/07/09 メディア: 単行本 購入: 158人 クリ…

ポワソン分布とχ2分布の関係

ポワソン分布と 分布の関係を解説する。 区間推定などの計算上では、ポワソン分布のような「離散分布」は実は扱いにくい。これは、そのままでは積分などの操作が行えないためである。逆に言えば、連続値の分布である 分布などの助けを借りれば、ポワソン分布…

統計検定1級(2018)レポート2 統計応用速報

午後の統計応用終わりました! 計算が少し面倒で、技巧的な計算がいくつかあったので、例年よりやや難しいかなという印象です。詳細は追って解説する予定。 選んだのは1、2、5です。前提知識がなくても実力で解けそうな問題を選んでいます。 第1問は、指…

統計検定1級(2018)レポート1 統計数理速報

午前中の統計数理終わりました! 計算が少し面倒でしたが、例年通りの難易度かなという印象です。詳細は追って解説する予定。 選んだのは1、3、5です。前提知識がなくても実力で解けそうな問題を選んでいます。 第1問は、χ二乗検定に関する問題。ガンマ関…

予測分散と正則化

世の中には多くの分散がある。標本分散、不偏分散、母分散、共分散...。数学的な定義の違い、文脈による呼称の違いなど、統計学の用語はとかく混乱を招きやすい。なまじ身近な数学のため多くの人が多少の知識を持ってしまっているからこそ、逆に言葉の氾濫が…

エルミート多項式、ラゲール多項式を高校数学で-

エルミート多項式、ラゲール多項式を高校数学の範囲で理解するために作成した問題を紹介する。 ①エルミート多項式に関するエクササイズ 「 を満たす についての関数列 がある。 のとき、以下の問いに答えよ。 (1) は 次の多項式であり、最高次の係数は であ…

ベイズ推定と最尤推定の比較

ベイズ推定と最尤推定を比較してみよう。 確率分布が、ある母数パラメータによって記述できるとする。このパラメータを用いて表現された確率分布を、確率モデル(本記事では尤度関数でも差し支えない)と呼ぶ。 最尤推定では、この確率モデルを母数の関数とみ…

モーメント母関数と確率分布の一対一対応(一意性)

2つの確率変数 の確率分布 が等しいことを証明したい。ぞれぞれの確率分布の表式が直接&陽に求めることができるなら話は終わりだが、簡単に求めることが困難な場合も多々ある。このような時数理統計では、それぞれのモーメント母関数を計算し、それが一致す…

参考書紹介(大学入試数学二次、趣味編)

☆数学 趣味編 大学入試レベルの数学力をさらに鍛えるための、”趣味”の数学参考書を紹介。 ・数学 超絶難問 そこまで”超絶”の難問はないが、歴史的な古典数学の有名問題を紹介する問題集。整数問題、数列、無限級数、場合の数、などが多い。難易度というより…

参考書紹介(大学入試数学二次、分野別編)

☆数学 分野別編 最難関大学入試レベルの数学を中心に、オススメの参考書を紹介します。 整数 ・教科書だけでは足りない大学入試攻略整数 (河合塾シリーズ) 整数問題を、基本〜難問まで段階的に学習していける参考書兼問題集。難易度はそこまで高くない。 教…

参考書紹介(大学入試数学二次、総合問題集編)

☆数学 総合問題集編 最難関大学入試レベルの数学を中心に、オススメの参考書を紹介します。 ・上級問題精講 適度な難易度の良問を集めた本。最難関大の入試や、模試に頻出の問題を取り上げる。各大学の過去問を解く前にさらえておきたい。 数学I+A+II+B 上級…

意外に難しい条件付き”分散”

条件付き確率は式がシンプルで扱いやすい一方、条件付き分散になると途端に難しくなる。今回は、条件付き分散になれるという目的で、以下の2つの項目について自分なりに説明してみる。 ① 条件付き分散の表式を求める ② 全分散の公式を証明する ① 条件付き分…

統計検定準一級合格への道筋

2018年上期の統計検定準一級、無事合格しました!傾向がガラリと変わってきているので、その対策を自分なりにまとめようと思います。 ① 問題分析 ・機械学習分野の割合増加 統計検定準一級の本来の試験範囲は、機械学習関連はサポートベクターマシンやk-近傍…

参考書紹介(古典、相対論、物理数学編)

☆物理(古典、相対論、物理数学編) 大学レベルの物理を中心に、オススメの参考書を紹介します。分野の偏りは愛嬌。 古典力学 ・物理学序論としての 力学 大学一年の入門書。 物理学序論としての 力学 (基礎物理学1) 作者: 藤原邦男 出版社/メーカー: 東京大学…

参考書紹介(量子物理、統計物理編) 2018年版

☆物理(量子物理、統計物理編) 大学レベルの物理を中心に、オススメの参考書を紹介します。分野の偏りは愛嬌。 量子力学 ・量子力学 (KS物理専門書) 満遍なく基本的な話題に触れてるし、そこそこ練習問題が豊富。 量子力学1 (KS物理専門書) 作者: 猪木慶治,川…

最尤推定とその例題

数理統計に置いて、あるパラメータを統計量から推定する方法は色々ある。その中で最も基本となるのが最尤推定である。 最尤推定は、文字通り”最も尤もらしい”ようなパラメータの値を推定値とする手法である。具体的には、観察されるデータ の起こる確率を知…

ベイズ推定の理論の基礎1

ベイズ推定を用いて、データ (n個の測定データ) から、 の従う確率分布を求めることを考える。 真の分布を とし、用いる確率モデルを としよう。ここで はモデルのパラメータである。ベイズ理論により、 に対する事後分布は以下のように書ける。 ここで は事…

移入のある出生死亡モデルからの負の二項分布の導出

移入のある出生死亡モデルから、モデルの均衡を解くことで負の二項分布が導かれることを示す。 人口などの状態を整数 で表し、その増減に対する確率を以下で定義する。 ここで、 は正の定数とし、それぞれ死亡、出生、移入に関する定数である。以下 とおく。…

ランダウアービュティカー公式によるオーム抵抗の導出

ランダウアービュティカー公式を、古典的な電子輸送に適用し、Ohm抵抗が導かれることを示す。 まず、ランダウアービュティカー公式は、透過確率 の散乱体を持つ、 個のチャネルを有する伝導体における伝導度を求める公式であり、 と書ける。 一方、Ohm抵抗で…

大学入試数学良問3-合同式の利用-

「 の桁数と、1の位の数を求めよ。ただし、 を用いても良い。」 (東大前期1989) 以下、考え方兼略解。考え方のポイントは、 ①合同式による解法、 ②二項展開を利用できるか の2つ。では、略解を記載する。 まずは、桁数を求めよう。 より を得る。よって、200…

保険数理におけるガンマ分布

この記事では、ガンマ分布を用いた保険数理の計算例を紹介する。 まず、ガンマ分布はどういう時に現れるのだろうか。 が指数分布 に従っているとする。この時、 はどのような分布に従うだろうか? su-butsu-kikaigakusyuu.hatenablog.com 前の記事によると、…

強化学習 考え方

強化学習の考えを数式なしでまとめる。 目的 「複数ステップの行動からなるタスクにおいて、1エピソード(試合)で獲得される報酬の和を、最大化するような最適行動を求める」 設定と定義 強化学習で必要となってくる各種設定の定義を列挙する。 ①エージェント…

カーネル法 考え方

カーネル法の考えを数式なしでまとめてみる。 Perspective 1:データ数個のカーネル関数の足し合わせ まず1つの見方としては、カーネル法は、カーネル関数を”基底”とし、学習に使用するデータ数個分のカーネル関数の線形和で、識別/回帰線を表してやろうとい…

多次元デルタ関数の導出(備忘録)

次元デルタ関数の求め方の備忘録。 デルタ関数は、以下の性質を持つ関数である。 積分すると1になるため、確率密度関数の一つとしても捉えることができる。すなわち、平均(定義されない場合は中心)の値が0になる軸対象な確率密度関数の極限として、デルタ関…

解離反応の平衡定数(備忘録)

分子の解離反応の際の平衡定数の求め方の備忘録。 に従って解離を起こす分子 の気体がある。 体積 の容器の中に、各分子が 個ずつ(計 ) あるとした場合の分配関数は、 \begin{eqnarray*} Z(N_A,N_B,N_{AB},V,T)&=&\frac{1}{h^{3N}N_{A}!N_{B}!N_{AB}!}V^{3N}…

非線形推定問題と確率最適制御と量子力学の対応1 -Pathwise-robust方程式-

今回から、「非線形推定問題と確率最適制御と量子力学の対応」について説明する。1回目は、非線形推定問題について説明し、推定方程式たるPathwise-robust方程式を導出する。2回目は、確率最適制御について説明し、Pathwise-robust方程式とベルマン・ハミル…

電流ノイズの導出

これまで紹介してきた確率分布を用いて、いくつかの系の電流のノイズを導出する。 (a) 量子ポイントコンタクト(1チャンネル量子導体+散乱体) ポイントコンタクトに到達した電子は、透過確率 [tex:{\displaystyle T}] で散乱体を透過すると仮定する。コンダ…

特異点解消定理とベイズ推定

昨今、代数幾何の手法をベイズ推定などの統計的学習理論に応用する取り組みがさかんになっている。 その中でも、日本人フィールズ受賞者の広中平祐が証明した特異点解消定理は、最も中心的な橋渡しをしていると言える。 今回は数式なしに、特異点解消定理が…