最尤推定とその例題
数理統計に置いて、あるパラメータを統計量から推定する方法は色々ある。その中で最も基本となるのが最尤推定である。
最尤推定は、文字通り”最も尤もらしい”ようなパラメータの値を推定値とする手法である。具体的には、観察されるデータ の起こる確率を知りたいパラメータ(母数 )で表し、その確率が最大となるような母数を推定値とする。この確率を、 に対する関数
と見なしたものを尤度関数という。また、これの対数をとったものを対数尤度 と呼ぶ。多くの確率分布は指数の構造が含まれるため、尤度関数の代わりに対数尤度を最大化する方が便利なことが多い。すなわち、 の方程式をとけば良い。
が独立かつ同一分布 に従うとする。この場合の対数尤度は
と表せる。
以下、具体的な例を紹介しよう。
1 指数分布の最尤推定-機械部品の寿命-
2つの機械部品の寿命に対する確率変数を とし、独立に指数分布 、 に従うとする。
(1) が観測された場合の の最尤推定値を求めよ。
(2) は観測されたが、時刻 ではまだ2つ目の部品が稼動状態であった。この時の の最尤推定値を求めよ。
2 超幾何分布の最尤推定-魚のサンプリング-
ある池の中にいる魚の数を推定するたい。 匹の魚を捕えて印をつけて放ち、再度 匹の魚を捕えたところ、 匹の魚に印が付いていた。池にいた魚は何匹だと推定されるか。
<解>
1(1)
対数尤度は
と書けるので、これを について微分すれば以下の方程式を得る
よって、最尤推定値は、 となる。
1(2)
に関しては、尤度は で与えられる。 に関しては、与えられた状況になる確率は
となる。よって尤度はこれらの積で書け、
と表すことができる。よって最尤推定値は、 となる。
2
匹の中から、 匹の魚を捕えて 匹の魚に印が付いているような確率は、
と表すことができる。これを最大にするような が最尤推定値である。
ただし、前問のように微分はできない。これは が自然数で離散値であるためである。そこで、高校数学でよく目にした以下の手順で尤度を最大することにする。
これが1より以上になるか、以下になるかで最大値を判定することができる。すなわち、 かつ になる境目の が、最尤推定値である。
すなわち、 を満たす時なので、最尤推定値はガウス記号を用いて と求まる。ここでガウス記号とは、中身を超えない整数値を吐く演算子である。
この例では、超幾何分布という離散かつ非指数型の分布であったため、わざわざ対数尤度にする必要ない。
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