ChunPom’s diary

数学、物理、機械学習に関する話題。あと院試、資格、大学入試まで。

数学

しっかり学ぶ数理最適化の演習解説ー2.7:相補性定理と、その応用

線形計画法において、主問題とその双対問題が実質的に等しい値を持つことが強双対定理により要請される。では、値ではなく最適解同士にはどういう関係があるのだろうか?以下の相補性定理がそれに対するアンサーとなる。 ・相補性定理 以下、とし、かつの全…

しっかり学ぶ数理最適化の演習解説ー2.9:ファルカスの補題から強双対定理を示す

線形計画問題のファルカスの補題から、強双対定理を証明する。なお、これは「しっかり学ぶ最適化」の演習問題2.9である。解答は自己流なので間違っていたらご容赦ください。強双対定理およびファルカスの補題については、下記を参照のこと。 su-butsu-kikaig…

しっかり学ぶ数理最適化の演習解説ー2.8:弱双対定理からファルカスの補題を示す

線形計画問題の弱双対定理から、ファルカスの補題を証明する。なお、これは「しっかり学ぶ最適化」の演習問題2.8である。解答は自己流なので間違っていたらご容赦ください。弱双対定理およびファルカスの補題については、下記を参照のこと。 su-butsu-kikaig…

ファルカスの補題、弱双対定理、強双対定理

線形計画法による最適化で特に重要な概念が、ファルカスの補題、弱双対定理、強双対定理である。これらにより、主問題とその双対問題を解くことの関係性が示される。 以下、これらの定理をまとめる。 ・ファルカスの補題(Farkas' lemma) 行列とベクトルが与…

参考書紹介(数理系) 2021年版

☆数学 学部レベルの数学を中心に、オススメの参考書を紹介します。 線形代数 ・チャート式シリーズ 大学教養 線形代数 高校向け参考書メーカのチャート式が、大学向けにも参考書を書いた!問題も豊富で分かりやすい、新しいスタンダード教科書。 チャート式…

グレブナー基底は何に使えるか?

名前はよく聞くグレブナー基底、一体何に使えるんだ?ということで、具体的な応用先を並べてみた。グレブナー基底をわかりやく言うと「多項式の集合を、シンプルで性質の良いものに変えた多項式の集合」である。例えば連立方程式を解くときに1文字ずつ変数消…

ガンマ分布の様々な期待値

を母数とするのガンマ分布はと表される。この分布の様々な期待値を計算してみよう。 まずは平均である。 ここで、であること、ガンマ分布の積分が1になることを用いた。 次に、分散を求める。 これと平均の結果により、分散の表式を得る。 次に、指数関数の…

ルジャンドル変換を高校数学で理解する

ルジャンドル変換(Legendre変換)は,熱力学における特性関数の解析や,最適化問題における双対問題など,様々な分野で現れる重要な理論である。本稿では高校数学のみを用いてルジャンドル変換の導出を図る。 ルジャンドル変換は平たく言えば,凸関数における…

ルベーグ積分の公式集8:有界変分関数の微分可能性

ルベーグ積分には様々な定理や公式が出てきて理解が追い付かなくなることがよくある。本ブログでは,理解の一助として,基本的な公式をまとめた。内容は随時追加していく予定。 ★有界変分関数の微分可能性 ・単調関数の連続性と有界性 単調関数は有界であり…

ルベーグ積分の公式集7:ラドン-ニコディムの定理

ルベーグ積分には様々な定理や公式が出てきて理解が追い付かなくなることがよくある。本ブログでは,理解の一助として,基本的な公式をまとめた。内容は随時追加していく予定。 ★ラドン-ニコディムの定理 ・変動の定義 可測空間が与えられ,任意のに対して有…

ルベーグ積分の公式集6:積分(フビニの定理)

ルベーグ積分には様々な定理や公式が出てきて理解が追い付かなくなることがよくある。本ブログでは,理解の一助として,基本的な公式をまとめた。内容は随時追加していく予定。 ★フビニの定理 ・直積測度空間 2つの測度空間に対し,任意のの直積を長方形と呼…

ルベーグ積分の公式集5:積分(項別積分)

ルベーグ積分には様々な定理や公式が出てきて理解が追い付かなくなることがよくある。本ブログでは,理解の一助として,基本的な公式をまとめた。内容は随時追加していく予定。 ★項別積分 ・ファトゥの補題 可測集合上の非負可測関数列に対して以下が成り立…

ルベーグ積分の公式集4:積分(定義,基本性質)

ルベーグ積分には様々な定理や公式が出てきて理解が追い付かなくなることがよくある。本ブログでは,理解の一助として,基本的な公式をまとめた。内容は随時追加していく予定。 ★積分 ・積分の定義 測度空間が与えられている時の,上における積分を考える。 …

ルベーグ積分の公式集3:可測関数

ルベーグ積分には様々な定理や公式が出てきて理解が追い付かなくなることがよくある。本ブログでは,理解の一助として,基本的な公式をまとめた。内容は随時追加していく予定。 ★可測関数 ・可測関数の定義 -加法族およびに対し, (1) が任意の実数について…

ルベーグ積分の公式集2:ボレル測度とルベーグ測度

ルベーグ積分には様々な定理や公式が出てきて理解が追い付かなくなることがよくある。本ブログでは,理解の一助として,基本的な公式をまとめた。内容は随時追加していく予定。 ★ボレル測度とルベーグ測度 ・最小の-加法族 集合とその部分集合の族に対して,…

ルベーグ積分の公式集1:可測空間と測度

ルベーグ積分には様々な定理や公式が出てきて理解が追い付かなくなることがよくある。本ブログでは,理解の一助として,基本的な公式をまとめた。内容は随時追加していく予定。 ★可測空間と測度 ・-加法族の定義 集合とその部分集合の族が次の条件を満たすと…

資産運用による利息~ハーディの公式の導出~について

資産運用によって生じる利息を定式化し,ハーディの公式を導出しよう。 ハーディの公式は,去年と今年の運用資産額と、その間に生じた利息額から,平均的な利回りを推定する公式である。 まずは,1年間の利息額と去年と今年の運用資産額との正確な関係を導こ…

2020東大入試数学(理系)問題と講評

2020年の東大数学講評について。 問題の難易度としては、 第一問:易、第二問:易、第三問:易、第四問:標準、第五問:標準、第六問:やや難。 前年よりやや易化〜並程度と考える。 第一問は、見るからに背理法の問題。見通しも立ちやすく、完答したい。 第…

関数解析の入門書おすすめ

関数解析の入門的な勉強に適した参考書の紹介です。 まずは集合と位相から ・はじめよう位相空間 (大田 春外) 集合・位相の基本を,高校数学の延長を意識して書いた本。位相空間の本番に行く前にどうぞ。 はじめての集合と位相 作者: 大田春外 出版社/メーカ…

ルベーグ積分の入門書おすすめ

ルベーグ積分の入門的な勉強に適した参考書の紹介です。 統計学や経済学科向け ・統計学への確率論、その先へ (清水泰隆) 数理統計をルベーグ積分の観点から説明した珍しい本であり、ルベーグ積分が必要とされる目的を知る格好の参考書。 普通の数理統計では…

双対標本共分散について

データのばらつきを簡単に評価するには,標本共分散行列を計算するとよいことはみなさんご存じだろう。すなわち、のデータ行列に対して、 ・・・(1) で定義される。上線は標本平均を表す。この行列はであり、データの次元の大きさを持つ行列となる。例えば主…

2019東大入試数学(理系)問題と講評

2019年の東大数学の問題を掲載する。 drive.google.com 問題の難易度としては、 第一問:易、第二問:易、第三問:やや易、第四問:標準、第五問:やや難、第六問:やや難。 第一問は、展開して積分するだけ。ただし、工夫できそうな「思わせぶりな」式の形…

統計検定自作問題2(数理統計向け)

「平均のポワソン分布に従う確率変数と、自由度の分布に従う確率変数を考える。すなわち、それぞれの確率分布を、とする。以下の問いに答えよ。 (1) を0以上の整数として、 が成り立つことを証明せよ。 (2) を0以上の整数として、が成り立つことを証明せよ。…

統計検定自作問題1(数理統計向け)

「を互いに独立に区間(0,1)上の一様分布に従う確率変数とし、小さい順にとする。以下の問いに答えよ。 (1) に対する確率密度関数を求めよ。 (2) に対する確率密度関数を求めよ。 (3) に対して確率変数の期待値を求めよ。」

実家に帰ったらスミルノフ教程が置いてあった

毎年年末年始には実家に帰るのだが、なぜかスミルノフ高等数学教程が置いてあった。 スミルノフ高等数学教程は全12巻からなる理工系学部〜修士向けの数学の教科書。特に、物理への応用を念頭においたものになっている(気がする)。確率論や多様体は含まれてい…

参考書紹介(統計学向け)-機械学習、ファイナンスもあるよ

統計学に特化した参考書紹介です。 統計学の基礎的教科書 ・統計学入門 (基礎統計学Ⅰ) もっともbasic。 統計学入門 (基礎統計学?) 作者: 東京大学教養学部統計学教室 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 1991/07/09 メディア: 単行本 購入: 158人 クリ…

ポワソン分布とχ2分布の関係

ポワソン分布と 分布の関係を解説する。 区間推定などの計算上では、ポワソン分布のような「離散分布」は実は扱いにくい。これは、そのままでは積分などの操作が行えないためである。逆に言えば、連続値の分布である 分布などの助けを借りれば、ポワソン分布…

予測分散と正則化

世の中には多くの分散がある。標本分散、不偏分散、母分散、共分散...。数学的な定義の違い、文脈による呼称の違いなど、統計学の用語はとかく混乱を招きやすい。なまじ身近な数学のため多くの人が多少の知識を持ってしまっているからこそ、逆に言葉の氾濫が…

エルミート多項式、ラゲール多項式を高校数学で-

エルミート多項式、ラゲール多項式を高校数学の範囲で理解するために作成した問題を紹介する。 ①エルミート多項式に関するエクササイズ 「 を満たす についての関数列 がある。 のとき、以下の問いに答えよ。 (1) は 次の多項式であり、最高次の係数は であ…

モーメント母関数と確率分布の一対一対応(一意性)

2つの確率変数 の確率分布 が等しいことを証明したい。ぞれぞれの確率分布の表式が直接&陽に求めることができるなら話は終わりだが、簡単に求めることが困難な場合も多々ある。このような時数理統計では、それぞれのモーメント母関数を計算し、それが一致す…