保険数理におけるガンマ分布
この記事では、ガンマ分布を用いた保険数理の計算例を紹介する。
まず、ガンマ分布はどういう時に現れるのだろうか。
が指数分布 に従っているとする。この時、 はどのような分布に従うだろうか?
su-butsu-kikaigakusyuu.hatenablog.com
前の記事によると、 の母関数と、ガンマ分布 の母関数を比較すると、後者が前者の 乗になっていることがわかる。すなわち、これは独立な 個の指数分布の確率変数の和 に対する母関数と一致する。
よって、
~
を得る。ガンマ分布は、指数分布に従う複数個の変数の和が従う分布と言える。
次に、損保で重要となるクレーム件数について考えよう。
時刻 までに起こったクレーム件数を とする。仮定として、クレームが発生する時間 の間隔は、指数分布に従うとしよう。すなわち、
~
さて、時刻 までのクレーム件数が 件となる確率は、
と表現できる。 とおくと、これは最初の議論により、 に従う。よって、 の同時確率密度関数 は、
と表せる。
よって、これを で積分することで、
を得る。
すなわち、 クレームの発生時間の間隔を指数分布で仮定すると、クレーム件数 はポアソン分布 に従うことがわかる。
上記の問題では、 を確定値として計算してきた。しかし、場合によっては、それすら確率変数として扱う必要がある場合がある。例として、クレーム件数 はポアソン分布 に従うが、 自体も確率変数で、それはガンマ分布 に従っている、というケースである。
この場合、クレーム件数に関する確率は、
\begin{eqnarray*} P(X=k)&=&\int_{0}^{\infty} P(X=k|Y=y)P(Y=y) dy\\&=&\int_{0}^{\infty} e^{-y}\frac{y^k}{k!}\times \frac{t^{s}}{\Gamma(s)}y^{s-1}e^{-ty} dy\\&=&{}_{k+s-1} C_k \left(\frac{t}{t+1}\right)^{s} \left(\frac{1}{t+1}\right)^{k} \end{eqnarray*}
と計算できる。
su-butsu-kikaigakusyuu.hatenablog.com
これは、 上記の記事にもある通り、負の二項分布 に一致する。このように、損保数理ではガンマ分布による積分が頻繁に顔を出す。
本記事は以下の教科書を参考にした。
アクチュアリー数学入門[第4版] (アクチュアリー数学シリーズ 1)
- 作者: 黒田耕嗣,斧田浩二,松山直樹
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2016/09/19
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る