フォッカープランク方程式の解法2-確率微分方程式-
フォッカープランク方程式には様々な解法のアプローチがある。今回は、良く知られている確率微分方程式による解法を紹介する。
前回リー代数による解法を紹介した際の例と同じ、ドリフトと拡散効果をもつ1次元のブラウン粒子を考える。
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すなわち、 に対する確率分布 が満たすフォッカープランク方程式を
とする。
まず、簡単のため、粒子が に局在する() とする。
(伊藤過程の)確率変数 の満たす以下の確率微分方程式を考える。
ただし、 はブラウン運動を表す。
この場合、級の任意の関数 に対して、伊藤の公式が使えて
\begin{eqnarray*}dh(X_t, t) &=&\frac{\partial{h}}{\partial{t}}dt +\frac{\partial{h}}{\partial{x}}dX_t +\frac{1}{2}\frac{\partial^2{h}}{\partial{x^2}} (dX_t)^2 \\ &=& \left(\frac{\partial{h}}{\partial{h}}+\gamma X_t \frac{\partial{h}}{\partial{x}}+\varepsilon\frac{\partial^2{h}}{\partial{x^2}}\right)dt +(2\varepsilon)^{1/2}\frac{\partial{h}}{\partial{x}}dB_t \end{eqnarray*}
を得る。積分すると
となり、以下 は とで0になると仮定すれば、左辺は0となる。
確率変数 に関して期待値をとると、末項は0になるため、
ここで は確率変数 の確率密度関数である。部分積分を施せば、
となり、(ほとんど任意の) で上式が成り立つには、被積分部分が0になる必要がある。
よって、 の確率密度関数がフォッカープランク方程式の解となる。
では、確率密度関数を求めよう。正規分布なので、平均及び分散がわかれば十分である。確率微分方程式を伊藤の公式により解けば、
を得る。従って、平均は 、分散は となる。
従って、初期条件 の下では、
がフォッカープランク方程式の解となる。
最後に一般的な初期条件 に拡張して、
を得る。これは、リー代数で求めた解に等しい。よって、確率微分方程式を用いてフォッカープランク方程式の解を得ることができた。