フォッカープランク方程式の解法1-リー代数-
フォッカープランク方程式には様々な解法のアプローチがある。今回は、あまり知られていないリー代数による解法を紹介する。
例として、ドリフトと拡散効果をもつ1次元の粒子を考え、速度などの変数 に対する確率分布 が満たすフォッカープランク方程式を
とする。
2つの演算子を
で定義すると、これらの交換関係は を満たし、リー代数を構成していることがわかる。
これらの演算子を用いれば、形式的な解は、
と書くことができる。
ここで、上記の演算子は
の関係を満たすことが証明されている(by ベイカー・キャンベル・ハウスドルフ公式)。
また、
であることを用いれば、 形式解を以下の積分形で表すことができる。
こうして、フォッカープランク方程式の解を求めることができた。
演算子をドリフトと拡散で分離することで、順番に解析を可能にさせることが鍵と言える。
さて、計算結果の吟味をしよう。
まず、ドリフトがない () 場合。
遷移確率が時間を分散とする正規分布となっているため 、ブラウン運動になっていることがわかる。
次に、拡散がない () 場合。
\begin{eqnarray*} P(x,t)&=&\int_{-\infty}^{\infty}\delta (y-e^{-\gamma t}x)P(y,0)dy \\ &=& P(e^{-\gamma t}x,0)\end{eqnarray*}
たとえば、 を速度だと思うと、速度が時間とともに減衰していくことになるが、 これは速度に比例した摩擦抵抗の項が存在するためによる。