ChunPom’s diary

数学、物理、機械学習に関する話題。あと院試、資格、大学入試まで。

資産運用による利息~ハーディの公式の導出~について

資産運用によって生じる利息を定式化し,ハーディの公式を導出しよう。

 

 ハーディの公式は,去年と今年の運用資産額 { \displaystyle A_{t-1},\ A_t}と、その間に生じた利息額 { \displaystyle I_t}から,平均的な利回りを推定する公式である。

まずは,1年間の利息額 { \displaystyle I_t}と去年と今年の運用資産額 { \displaystyle A_{t-1},\ A_t}との正確な関係を導こう。この関係は後述するように一般的には非線形積分で書ける。ハーディの公式はこの関係を近似して得られるものである。

 元本の金額1に対して,1年間に発生する利息を利率といい, { \displaystyle i}とおく。1年間に利息が原本に組み入れられる回数(転化回数)を { \displaystyle n}とし,その1回分の実質的な利率を名称利率 { \displaystyle i^{(n)}}と定義する。つまり,1回分で資産は { \displaystyle 1+i^{(n)}/n}倍になる。この時,利率と名称利率との関係は次式で書ける。

  { \displaystyle \left( 1+\frac{i^{(n)}}{n}\right)^n=1+i}・・・(1)

以下,利力 { \displaystyle \delta}を以下の式で定義する。

  { \displaystyle \delta=log(1+i)}・・・(2)

ここで自然対数とする。

式(1)を用いると,以下のように利力が名称利率を用いて書ける。

  { \displaystyle \delta=\frac{1}{n}log \left(1+\frac{i^{(n)}}{n}\right)}

これは転化回数 { \displaystyle n}によらず成り立つので,無限大に極限をとってもよい。すなわち,

  { \displaystyle \delta=lim_{n\to \infty}i^{(n)}}・・・(3)

を得る。

 さて次に,1年間の利息額 { \displaystyle I_t}と去年と今年の運用資産額 { \displaystyle A_{t-1},\ A_t}との関係を導こう。

時間  { \displaystyle [t-1,t]} { \displaystyle n}分割し, { \displaystyle k}番目の時間を { \displaystyle t_k}とおく。この時の運用資産額 { \displaystyle A_{t_k}}に対する利息額は,名称利率を用いて

  { \displaystyle A_{t_k}\times i^{(n)}/n}

と書ける。よって,年間利息額はこれらの和をとり,  { \displaystyle n}に対して極限をとったものである。

  { \displaystyle I_t=lim_{n\to \infty} \sum_{k=0}^n i^{(n)}A_{t_k}}・・・(4)

式(4)に対して区分求積法を用い,さらに式(3)を用いれば,

    { \displaystyle I_t=\int_{t-1}^t \delta A_s ds}・・・(5)

を得る。こうして,運用資産額から年間利息額を算出する式が得られた。

式(5)を近似することで,ハーディの公式を導出しよう。

積分で得られる面積が,右端と左端を上底下底とする台形で近似できるとする。すなわち台形近似を(5)に施すと,

    { \displaystyle I_t \approx \frac{A_{t-1}+A_{t}}{2}\times log(1+i)}・・・(6)

を得る。利率は1より十分小さいとしてテイラー展開すると, { \displaystyle log(1+i)\approx i-i^2/2}であるから,(6)に代入すると

  {\displaystyle I_t \approx \frac{(A_{t-1}+A_{t})i-(A_{t-1}+A_{t})i^2/2}{2}\approx \frac{(A_{t-1}+A_{t})i-I_{t}i}{2}}

を得る。ここで近似で { \displaystyle iA_{t-1}\approx iA_t\approx I_t}を用いた。

上式を利率についてまとめなおすと

     { \displaystyle i \approx \frac{2I_t}{A_{t-1}+A_t-I_t}}・・・(7)

を得る。式(7)がハーディの公式である。

定義や用語は下記を参照にした。