ChunPom’s diary

数学、物理、機械学習に関する話題。あと院試、資格、大学入試まで。

1階偏微分方程式の解の種類(完全解、一般解、特殊解、特異解)

2つ以上の独立変数の関数の偏導関数に対する方程式を偏微分方程式と呼ぶ。
1階の偏微分方程式においては、以下のように、複数の解の種類が存在する。
完全解
一般解
特殊解
特異解

今回は、ごっちゃになりやすいこれらの解を、区別するよう努めたい。
それぞれ一言で説明すると
①完全解:独立変数の個数分の任意定数を持つ解のこと
②一般解:任意関数を持つ解のこと
③特殊解:一般解の1つの場合。特解とも
④特異解:上記に当てはまらない解
となる。

例で説明しよう。{\displaystyle u(x,y)} に関する以下の偏微分方程式を考える。

{\displaystyle \frac{\partial u}{\partial x}-\frac{\partial u}{\partial y}=x^2-y^2}

まずは、完全解。任意定数 {\displaystyle a} を用いて
{\displaystyle \frac{\partial u}{\partial x}-x^2=\frac{\partial u}{\partial y}-y^2}=a
とすると、完全解はこれを積分することで求まる。

\begin{eqnarray*} u&=&\int (x^2+a)dx+\int (y^2+a)dy \\&=&\frac{1}{3}(x^3+y^3)+a(x+y)+b.\end{eqnarray*}

確かに、任意定数は2つで、変数の数と等しい。

 

次に、一般解を求める。
完全解において、 {\displaystyle b=\psi(a)} のように、一方の定数を他方の定数の関数とする。
この時、完全解の表式を {\displaystyle a}微分すれば、 {\displaystyle x+y+\psi '(a)=0} を得る。

これは、「{\displaystyle a}{\displaystyle x+y} で表せる」ということに他ならない。従って、完全解の2,3項目は合わせて任意関数 {\displaystyle \phi (x+y)} とおける。

よって、一般解は、

\begin{eqnarray*} u=\frac{1}{3}(x^3+y^3)+\phi (x+y).\end{eqnarray*}

 

特殊解は、一般解の1つの場合なので、{\displaystyle \phi (t)=-\frac{1}{3}t^3} にしてやれば、特殊解として

\begin{eqnarray*} u=-xy(x+y)\end{eqnarray*}

を得る。

 残念ながら、特異解は今回は存在しない。特異解のよくあるパターンとしては、上記の完全解において、{\displaystyle a,b} を独立に動かして得られる”包絡面”などの関数がある。

 

最後に、偏微分方程式の解法の1つとして馴染みの深い変数分離法で解いてみよう。 

与えられた方程式を移項して整理すると、

{\displaystyle \frac{\partial }{\partial x} \left(u-\frac{1}{3}x^3\right)=\frac{\partial }{\partial y}\left(u-\frac{1}{3}y^3\right)}

 を得る。変数分離して解けば、任意定数 {\displaystyle a,b} を用いて 

\begin{eqnarray*} u=\frac{1}{3}(x^3+y^3)+ae^{b(x+y)}\end{eqnarray*}

を得る。お気付きの通り、変数分離法で直接一般解を求めることはできない。

一方で、Lagrange-Charpit理論による手法を用いれば、1階の偏微分方程式であれば一般解を求積することが可能である。むしろ変数分離法は、一般解の求積が困難な高次の階数の偏微分方程式において、特殊解を容易に求め、それを足し合わすことで一般解を構築する手法であると言える。